人間ドックと健康診断というのは、一見すると似ているところがあり、どちらも病気の自覚症状がないような人が、病気の早期発見や健康の保持を目的として行うというところには、たしかに共通点がないわけではありません。しかし、人間ドックと健康診断をこまかく対比してみると、両者にはいくつもの違いがみられます。まず、健康診断のほうは労働安全衛生法とよばれる法律によって、たとえば会社であればその従業員を対象として年1回はかならず定期的に実施することが義務付けられているなど、法律上の決まりごとがあります。そのいっぽうで、人間ドックについては、法律上の規定がないまったくの任意のものであるため、実施しているそれぞれの医療機関で検査メニューなども大きく異なっています。
また、健康診断のほうは、一般には集団検診といって、おおぜいの対象者をまとめて受診させることが多いため、そうした方法に適した効率化が図られていることが多いといえます。メニューも身体測定、血液検査、尿検査、肺レントゲン検査などのベーシックなものだけにとどまっています。いっぽう、人間ドックのほうは、完全に受診する個人に対応して行われるため、メニューも豊富で希望により選択できるようになっているという違いがあります。そのため、たとえば脳や消化器の病気の発見に特化した検査を行ったり、MRIやCTなどといった、体内のようすを精密に検査できるような機器を用いたりすることができるのです。